橋本病の症状
橋本病(慢性甲状腺炎)により甲状腺機能低下が起こるとされていますが、慢性甲状腺炎の症例全体の中で、甲状腺機能の指標のひとつである血清遊離サイロキシン
(fT4) 濃度が低下している症例は約4分の1程度にとどまります。明らかな甲状腺機能異常を伴わない症例や、甲状腺刺激ホルモン (TSH) 値が軽度上昇するも血清fT4濃度や血清遊離トリヨードサイロニン
(fT3) 濃度の低下がみられない、潜在的甲状腺機能低下症の段階にとどまる症例の方が多い。また、病初期の急性期には一時的に「ハシトキシコーシス
」と呼ばれる甲状腺中毒症の状態になり甲状腺機能の亢進が起こることがある。
白血球、とくにTリンパ球の甲状腺への浸潤も特徴的です。非ホジキンリンパ腫との関連が指摘されています。
診察所見としてはびまん性の甲状腺腫大がみられる。また、病初期には甲状腺機能亢進による症状(体重減少、脈拍数の増加など)を呈しますが、その後は甲状腺機能低下に起因する症状がでてきます。体重増加、うつ状態、全身の疲れ、脈拍数の低下、高コレステロール血症、便秘、記憶力の低下、不妊、毛髪の脱落などが起こるとされています。
橋本病の検査
日本甲状腺学会によりガイドライン案が策定されています。これによりますと、臨床所見としてはびまん性の甲状腺腫大(ただしバセドウ病などの別疾患によるものを除外する)を、また検査所見は甲状腺の自己抗体(抗甲状腺マイクロゾーム抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗サイログロブリン抗体)、または 細胞診におけるリンパ球の浸潤所見を確認し、臨床所見の存在ならびに検査所見のうちいずれか1つの陽性をもって橋本病の診断がなされます。抗甲状腺抗体は細胞診と比較して感度、特異度ともに高い検査と考えられています。
慢性甲状腺炎であることの診断には甲状腺ホルモン値は影響しないが、甲状腺機能異常の合併がよくみられること、また甲状腺機能異常に対しては治療介入が必要であることから、甲状腺機能異常を念頭においた問診と、甲状腺機能(前述のfT4, fT3, TSH値)の測定も必要である。
超音波検査の所見は特異的ではないが、甲状腺腫大に加え、リンパ球の浸潤に伴う不均一な低エコーの所見がみられることが多い。
橋本病の治療
甲状腺腫大が軽度で、甲状腺機能低下のない場合はは、特別な治療は行わずに、年に1回程度の診察で経過を観察します。橋本病患者においては甲状腺機能は変動しやすいため、定期的な経過観察が必要となります。また甲状腺機能異常(低下症や亢進症)の症状が出現したときには主治医を受診する必要があります。
甲状腺機能低下を伴う症例に対しては、甲状腺ホルモン剤の補充を行う。一般には合成サイロキシン (T4) 製剤であるレボチロキシンナトリウム(商品名・チラーヂンS)の内服を行うことが多い。T4製剤の場合、血中半減期が長い(約7日)ため、1日1
回の内服で血中の甲状腺ホルモン濃度をコントロールできます。TSHの正常化が投与量の目安となります。
橋本病の治療期間と予後
甲状腺ホルモンの測定を時々受け、ホルモンが低下しているということがわかれば、甲状腺ホルモンの服用を始めるだけでよいのです。橋本病と診断されても、あまり心配は必要ありません。
橋本病に良い漢方
橋本病に良い漢方 |
十全大補湯
(じゅうぜんたいほとう) |
胃腸の働きを良くして消化吸収力を高めて体力を回復させ、元気を取り戻すのを助けます。 |
補中益気湯
(ほちゅうえっきとう) |
胃腸の働きを良くして消化吸収力を高めて体力を回復させ、元気を取り戻すのを助けます。 |
芎帰膠艾湯
(きゅうききょうがいとう) |
出血や貧血などに使用され、不正出血や痔出血・血尿・生理不順・流産癖・腎出血などに使用されています。 |
当帰芍薬散
(とうきしゃくやくさん) |
体を温めて血流を改善する漢方処方で、痛みをやわらげたり、貧血症状やホルモンバランスを整える効果も期待でき、排尿を促進して水分の代謝異常を改善する効果もあります。
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桂枝茯苓丸
(けいしぶくりょうがん) |
血行をよくして熱のバランスを整えることで、のぼせや冷えを改善し、子宮などの炎症をしずめます。 |
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