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急性腎不全の症状、検査、治療急性腎不全.病態栄養

急性腎不全の症状・検査・治療

急性腎不全症状、治療について説明しております。急性腎不全は、急激に腎機能が低下する状態をいいます。急性腎不全の症状は、乏尿になたり、無尿になったりします。急性腎不全は、余りなじみの無い病気ですが、高齢者の増加に伴い、糖尿病、高血圧など動脈硬化の増加、また、これらの疾患の低年齢化に伴い、急に腎臓の働きが低下することも多くあります。また、急性腎不全はとても死亡率の高い病気の一つでもあります

急性腎不全の原因

急性腎不全の原因は、狭心症などの心臓病の診断や治療時に行われる造影検査の際、腎機能が低下している方や、高齢者、糖尿病等の持病を持っている場合、造影剤が尿細管の細胞を傷害し、腎臓の機能が低下をし急性腎不全の状態になることがあります。また、糸球体が急激に傷害される病気として急性糸球体腎炎や溶血性尿毒症症候群などがあり、急性腎不全の原因となります。さらに急性腎不全を見過ごされやすい原因として、抗生物質や鎮痛剤などによる、薬剤アレルギーによって腎臓に起こる薬剤性急性腎不全の場合があります。アレルギー反応は主にネフロンや血管の間を埋めている間質という部分に起こることが多く、急性間質性腎炎と呼びます。急性間質性腎炎とは、腎臓の間質に炎症に伴う無数の細胞が集まる事により、ネフロンや血管が圧迫され、尿を作ることが出来なくなり発症します。しかし、急性腎不全は、自然に治ることもありますが、急性腎不全による後遺症を残すことが多いと考えられています。急性腎炎の治療で薬を使用する際は、このようなことを招くということを認識したうえで使用することが求められます。 さらに、急性腎不全の原因によって腎前性急性腎不全、腎性急性腎不全、腎後性急性腎不全に分けられます  急性腎不全の原因には様々なものがあります。尿が作られ体外に排泄されるまでの経路によって、腎前性急性腎不全、腎性急性腎不全、腎後性急性腎不全に分けられます。急性腎不全の程度により、一時的に透析療法を必要とするケースもありますが、急性腎不全の原因がなくなれば治る可能性は十分にあります。透析を受けている限り急性腎不全が原因で死亡することはありませんが、急性腎不全引き起こした原因となった病気で死亡することも多くあります。

急性腎不全の種類

急性腎不全が起きる原因は、上記の説明のとおり様々あります。急性腎不全を分類するにあたって、尿が出来て排出されるまでの経路によって、腎前性、腎性、腎後性に分ける事ができます。腎臓の機能が急激に落ちる急性腎不全は、体へ与えるダメージも大きく、急性腎不全の状態によっては人工透析を必要とします。人工透析は、腎臓機能が低下した事によるものをサポートするだけであって、腎臓の機能が低下した原因を調べ治療する必要があります。急性腎不全を起こすものには様々な疾患がありますが、重症化する疾患も多く注意が必要です。

腎前性急性腎不全

急性腎不全の最も多い原因の1つにショックがあります。ショックとは、心筋梗塞や大出血などによって血圧が急激に下がる状態を言い、このような場合、腎臓を流れる血液が極端に減少するため、尿を作ることが出来なくなります。急性腎不全の原因が腎臓に十分な血液が流れてこないことにありますから、腎前性急性腎不全と呼びます。血圧を上げて、腎臓に十分な血液が流れるように治療すれば、急性腎不全も改善されます。

腎性急性腎不全

腎臓に流れる血液が減少すると、腎臓に必要な酸素の運搬も出来なくなります。この場合、特に酸素不足に弱い尿細管細胞が死んでしまい、尿細管壊死が起こります。尿細管が働かなくなると、いくら糸球体が正常でも、ネフロンとしての働きが出来きなくなるため、急性腎不全となります。いくら血圧を上げて十分な血液を腎臓に流しても手遅れで、新しい尿細管細胞が生まれるまで、腎臓の働きは停止します。このような状態を腎性急性腎不全と呼びます。

腎後性急性腎不全

最も理解しやすいのは腎後性急性腎不全です。前立性肥大などが原因で尿の通り道が閉塞すると、当然尿が出なくなり、腎臓の尿を作る働きもストップし、急性腎不全となります。しかし、治療も原因が明確であるため簡単でこのような閉塞を取り除けば治ります。ネフロンの項で述べたように、腎臓の働き、すなわち尿を作る過程はネフロンと言う管状の構造で行われているため、ネフロンの一部が傷害されても全体の働きが出来なくなり、尿を作ることが出来なくなります。このような傷害が突然、しかもすべてのネフロンに起こると急性腎不全状態となります。このような状態を腎後性急性腎不全と呼びます。

急性腎不全の症状、検査、診断、治療

急性腎不全の症状

急性腎不全の特徴としては、糸球体濾過機能の低下により尿量が400ml/日(乏尿)となります(正常な場合500~2000ml/日)。ただし、尿量400ml/日以上である非乏尿の場合もあります。また、急性腎不全の影響により、体液の恒常性機能が失われ、高尿酸血症、尿毒症が出現する事とがあります。急性腎不全の発症期には、乏尿期、利尿期、後利尿期へと移行します。数日から数週間の乏尿期を経ることができれば、回復へと向かいます。しかし、利尿期は3~7日、後利尿期は6~12ヶ月続きます。

乏尿期における急性腎不全の症状

乏尿期における急性腎不全の症状としては、尿の濁り、蛋白尿、吐血、嘔吐、下痢、呼吸困難、昏睡、頭痛、脱力、頻呼吸、意識障害、痙攣、浮腫、高血圧、心不全、肺水腫などの尿毒症症状が現れます。また、急性腎不全の検査所見としては、血清尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン(Cr)、代謝性アシドーシス、高カリウム血症、高リン血症、高尿酸血症、腎機能の低下などが診られます。

利尿期における急性腎不全の症状

利尿期における急性腎不全の症状としては、尿量は2000ml/日以上となり、10000ml/日以上の場合もあります。その多尿の影響により、体重の減少が現れることもあります。しかし、水、電解質代謝の調節機能はなく、尿の生成をしているに過ぎない状態です。

後利尿期における急性腎不全の症状

後利尿期における急性腎炎の症状としては、尿量は徐々に正常に戻ります。また、乏尿期、利尿期に見られたような症状は消失します。しかし、腎機能が完全に戻るまでは注意が必要です。

急性腎不全の検査における注意事項

急性腎不全による老廃物の蓄積

急性腎不全による老廃物の蓄積として大きな問題となるのは、高窒素血症です。この高窒素血症が消化器症状(吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢)、中枢神経症状(意欲の低下、全身倦怠感、意識障害)そして出血傾向を示す尿毒症状を引き起こします。

急性腎不全による水・食塩の蓄積による心不全,高血圧 

急性腎不全による水分量やNa(食塩,ナトリウム)などの蓄積により心不全や高血圧などのリスクが高くなります。また、塩類の蓄積としてK(カリウム)濃度もたびたび問題となり、この高K血症は結果として不整脈を招く原因となります。

急性腎不全による、高P、低Ca血症は、慢性心不全の引き金に

急性腎不全による高リン血症の症状はほとんど低カルシウム血症による症状です。カルシウムが減少すると神経は興奮しやすくなりますが、筋肉の収縮は減少します。筋肉の収縮が低下の原因は、神経筋接合部のアセチルコリンの放出を低カルシウム血症が妨げるためです。末梢神経が興奮すると、自ら信号を発し筋肉を収縮させます。これをテタニーと言い、 神経の興奮が筋肉の収縮低下に勝るため、筋肉が収縮するのです。感覚神経も興奮されやすくなるため、しびれ感、チクチク感を感じるようになります。喉頭の平滑筋も収縮させるために嚥下障害、気管けいれんによる息切れが起こり、気道を閉塞して死亡することもあります。中枢神経が興奮すると、けいれんが起こります。低カルシウム血症は心筋の収縮を減少させるために、心拍出量減少、慢性心不全が起こります。

急性腎不全による、代謝性アシドーシスは重度では昏睡も。

急性腎不全における代謝性アシドーシスでは吐き気やそれに伴う嘔吐、疲れなどをひきおこします。急性腎不全が悪化すると、眠気を感じ、意識も不鮮明となります。また重度の脱力感と、吐き気も高度がおこります。更に悪い状態が続くと、血圧低下からショック状態や昏睡を引き起こし致命的になります。また、急性腎不全により呼吸がやや速くなり、深くなりますが、これはアシドーシスを是正し、二酸化炭素を追い出そうとするものによるものです。

急性腎不全の検査

 急性腎不全では腎臓の機能のすべてが障害されるため、腎不全としてのすべての臨床症状,検査値異常が出現しすることが知られていますが、急性腎不全では腎機能低下の期間が比較的短いことが少なくないため、腎不全として短期間で臨床上問題となる事があります。

急性腎不全に行われる検査内容

BUN・・・基準値(8-22mg/dl)以上
血清クレアチニン(Cr)(男0.6-1.1、女0.4-0.7mg/dl)・・・基準値以上
血清K(3.6-4.9mEq/l)・・・・・・基準値以上
Hb・・・・・・基準値(男13.7-17.4、女11.3-14.9mg/dl)以下
⑤血液ガス・・・・代謝性アシドーシス
⑥尿量・・・・400ml/日未満
⑦胸部X線
   ・心胸比の拡大
   ・肺うっ血
   ・肺水腫が疑われるとき
⑧心電図・・・・高K血症が疑われるとき

急性腎不全の診断

腎不全が急性腎不全なのか慢性腎不全なのかを知る事は治療の中で非常に重要になります。しかし、腎機能の経過が不明の高窒素血症の場合には慢性腎不全との鑑別が必要となります。慢性腎不全との識別のポイントをまとめてあります。以下の例を参考にして、数日から1~2週後に腎機能を再検査を行い、高窒素血症の進行速度から急性腎不全と慢性腎不全の識別を行うことになります。

①既往歴として、急性腎不全では下痢、嘔吐、手術、薬剤投与など生体への明らかな負荷が直前にあることが多いのに対し、慢性腎不全では腎不全そのものが偶然発見されることが多いほか、過去に蛋白尿、浮腫(むくみ)、高血圧などの既往歴を有することが多い

②腎サイズでの判断、急性腎不全では腎サイズは大きいことが多いですが、慢性腎不全では小さいことが多い事がが参考になります。

 以上の事項により識別できない時には、数日から1~2週後に腎機能を再検査を行い、高窒素血症の進行速度から急性腎不全と慢性腎不全の識別を行うことになります。また、急性腎不全の種類別における

急性腎不全の原因による鑑別

 狭義の急性腎不全では、腎機能を積極的に回復させる治療がありませんが、原因を除去することで腎機能の自然回復が期待できます。その他の急性腎不全では原因疾患に対する積極的な治療で腎機能の回復を促進できますが、原因に対する治療を行わない限り腎機能の回復は期待できず慢性腎不全となります。同じ急性腎不全といってもその原因により治療方針が大きく異なり、治療方針の適否が腎機能の予後に大きく影響するため、急性腎不全の原因の識別は重要です。

腎前性急性腎不全

 腎前性急性腎不全は細胞外液や循環動態の著しい変化によって起きるため、直前にそのようなことをきたす病歴の有無、体液量や循環動態の変化を示す身体所見の異常の有無(血圧低下,起立性低血圧,頻脈,皮膚乾燥,体重減少)が診断の参考になります。また、腎血流量減少が起きると、生体は尿中への水分、Naの喪失を減らし腎血流量の維持、回復に努めるため、尿量の減少、尿の濃縮,尿中Na排泄の低下などが認められます。

腎後性腎不全

 腎後性腎不全は前立腺肥大症、骨盤内手術、繰り返す膀胱炎などの既往や、乏尿・多尿を繰り返す病歴などによって腎後性腎不全を疑われる場合もあります。しかし,無症状で偶然発見されることも少なくありません。腎後性腎不全の場合には尿管カテーテル挿入や腎瘻造設によって腎機能の早期回復を期待できるうえ、超音波によって簡単に診断できます。

腎性腎不全

 腎性腎不全のうち、急性間質性腎炎によるものでは尿細管性蛋白尿(α1 -ミクログロブリン,β2 -ミクログロブリン)の著増が特徴となります。薬剤投与中に発現した急性腎不全では急性間質性腎炎によるものを疑い尿細管性蛋白尿を測定するとともに薬剤の変更・中止を考慮が必要となります。 狭義の急性腎不全では直前に血圧の低下や手術、尿細管壊死を起こす薬剤の投与など腎にとって大きな侵襲となる明らかな出来事があります。診断に迷うのは、血圧低下や脱水などの場合の腎前性急性腎不全との識別ですが、この際には尿浸透圧、尿Na濃度が参考になります。狭義の急性腎不全では、尿浸透圧は300mOsm/L前後、尿Na濃度は20 mEq/L以上となります。薬剤投与後に発症した急性腎不全では薬剤による急性間質性腎炎との識別が問題となることがありますが、尿細管性蛋白尿の著増の有無で鑑別は多くの場合可能です。確定診断には腎生検が必要となります。 以上の急性腎不全の原因の検討によって原因がはっきりしないうえ、尿蛋白や潜血反応が陽性の場合には急速進行性糸球体腎炎を疑いANCA、抗基底膜抗体をチェックします。確定診断には腎生検が必要です。

急性腎不全の治療

 急性腎不全は手術、造影検査、抗悪性腫瘍薬や抗生物質の投与、などにより細胞外液量が減少している状態では発症しやすく、前もって十分な補液を行っておく事が予防するうえで重要とされています。 しかし、実際の医療の現場では造影検査前には絶食が指示されることが多い。また、手術や抗悪性腫瘍薬投与を受ける患者も食欲の低下、発熱などにより細胞外液が減少している状態にあることに留意することが大切。腎機能がもともと低下している患者や、糖尿病患者、高齢者など、急性腎不全の発症の危険の高い患者に手術、造影検査、抗悪性腫瘍薬の投与、などを行う場合にはそれらの必要性について慎重な考慮が必要になります。また、前もって経静脈的補液を行って脱水を是正しておくなどの慎重な対応が必要となります。

急性腎不全の治療

急性腎不全の治療は「原因に対する治療」と「腎不全から回復するまでの腎不全期の管理」の2つから成ります。

急性腎不全の原因に対する治療

 腎前性と腎後性の急性腎不全および腎性腎不全のうち急速進行性糸球体腎炎や間質性腎炎によるものでは、補液、尿路閉塞の解除や原疾患に対する治療などにより腎機能の早期の回復が期待できます。そのため、原因に対する治療を行わなければ自然回復は期待できず、慢性腎不全となる。したがって、これらの原因による急性腎不全では急性腎不全を引き越している原因の除去が治療目標の中心になります。

急性腎不全期の管理と食事療法

急性腎不全を引き起こした原因疾患への治療や自然経過により腎機能が回復するまでの期間は、①腎不全による高窒素血症、②水・Naの貯留による心不全や高血圧、③高K血症による不整脈などにより生じる生命の危険や苦痛を回避するため、腎不全による症状の出現の防止や症状の軽快を図ります。急性腎不全の期間に生命の危険の引き金となるものは高窒素血症ですその為、急性じん不全でちゅういしなければいけない尿毒症症状、肺水腫、高K血症、代謝性アシドーシスなどです。これらの出現の有無を中心に患者の観察を行います。尿毒症症状との関連として、食事摂取量、意識状態、便潜血反応などに注意が必要です。肺水腫は主として水分・Naの蓄積によって起きるため、肺水腫出現以前に体重の増加が見られることが多いので、尿量とともに体重のチェックは必須となります。ただし,食事摂取量の減少その他によりもともと体重が減少傾向に傾くため、体重の評価にはこの点の考慮が必要です。高K血症と心電図変化は必ずしも並行しないことがあります。最終的には心電図変化を重視して観察することとなります。 腎不全の管理を目的とした治療は,食事療法,薬物療法,血液浄化療法から成ります。

急性腎不全の食事療法の考え方

①体たんぱく質の異化作用(糖化、エネルギー化など)を予防するために十分なエネルギー補給が必要となります。*体たんぱく質:体を構成しているたんぱく質 ②水・電解質のコントロール状態により対応します。

急性腎不全の亢進度別における食事指導

異化亢進度 エネルギー
(kcal/kg/日)
たんぱく質
(g/kg/日)
食塩
(g/日)
水分
軽度 35~40 0.5~0.8 7以下 尿量により計算
中度 25~35 0.8~1・2
高度 35~45 1.0~1.5
※異化亢進度:体たんぱく質の異化作用(糖化、エネルギー化)の強さを示します。 摂取エネルギー(特に糖質)の低下により、亢進度が増します。
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