大腸の病気の種類 |
各疾患の説明 |
細菌性腸炎(食中毒) |
カンピロバクター(ブタ肉、トリ肉)、サルモネラ(タマゴ、トリ肉など)、病原性大腸菌(牛肉など)、腸炎ビブリオ(カキなどの魚介類)、黄色ブドウ球菌(おにぎり)などの細菌感染が原因になります。いずれも、食べ物が十分に調理されていない時や、料理人の手洗いがきちんとなされていない際に感染します。これらの細菌が、腸粘膜に付着・侵入したり、細菌が出す毒素の影響などで腸管粘膜に炎症が起きます。
感染者の多くは成人とほぼ同じ内容の食事(とくに外食をしたり、店で買った惣菜など)を食べる年齢の子どもです。家庭で作った離乳食を食べている乳児や、母乳だけを飲んでいる赤ちゃんには起こりにくい病気です。
その他食中毒情報はこちら ⇒ 食中毒大辞典
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偽膜性腸炎 |
偽膜性腸炎は感染症で、クロストリジウム・ディフィシルと呼ばれる芽胞を形成する偏性嫌気性のグラム陽性桿菌が原因菌となります。さらに、この細菌のうち約30%の毒素産生株が偽膜性腸炎を含む腸管感染症の原因となります。この偽膜性腸炎は、重篤な臨床症状を引き起こす可能性が高い疾患ですので注意が必要です。偽膜性腸炎の発症危険因子は、65歳以上の高齢者、易感染性患者、重度の基礎疾患、長期入院、胃酸の長期間の抑制など、とされています。 |
急性虫垂炎 |
盲腸は、医学的には急性虫垂炎が正式な病名です。大腸の盲腸という部位の下端に突出した虫垂突起の炎症で、これが「盲腸」といわれるゆえんです。 発症原因にはさまざまな説がありますがいまだ解明されていません。小児で腹痛の原因になる外科的疾患では急性虫垂炎の頻度が最も高く、とくに6歳以下の乳幼児では診断の遅れから容易に重症になります(50~60%が穿孔性(せんこうせい)虫垂炎)。 |
クローン病 |
クローン病とは、小腸、大腸を中心とする消化管に炎症を起こし、びらんや潰瘍を生じる慢性の疾患です。症状は、腹痛、下痢、下血、体重減少、発熱などです。20代に最も多く発症します。欧米に多く、日本では比較的少ない疾患ですが、最近患者数が増えています。潰瘍性大腸炎と似ている点も多く、2つをまとめて炎症性腸疾患と呼びます。 |
腸管型ベーチェット病 |
腸管ベーチェット病はベーチェット病の中でも特殊なベーチェット病として通常のベーチェット病からある程度期間を経過したあたりから遅れて発症したりします。特殊なベーチェット病であるため、時には命にも関わることになるので、注意が必要です。ベーチェット病は身体のあらゆる部分に潰瘍ができますが、腸管ベーチェット病の場合は、大腸と小腸の境目の回盲部と呼ばれる部分に潰瘍がよくできるという特徴があります。 |
S状結腸軸捻転症 |
S状結腸軸捻転症は、S状結腸は腸間膜(腸を覆っている膜)が長く、可動性に富む為に、時に腸間膜がよじれS状結腸の血行不全が起き複雑性(絞扼性)イレウスを来たします。常習性の便秘の人やS状結腸の過長症の人に起きます。 |
大腸アメーバ性腸炎 |
赤痢アメーバという原虫による大腸の感染症で、世界で年間約5千万人の感染者、4~10万人の死亡者がいると推定されています。赤痢アメーバの嚢子(のうし)に汚染された飲食物を口からとることで感染します。急性期の患者さんよりも嚢子を排出する無症候性の感染者が感染源として重要です。
ほかの寄生虫感染症に比べ、日本でも多くの感染が発症しているので注意が必要です。 |
大腸ポリープ |
大腸ポリープとは、大腸の粘膜の一部がいぼ状に盛り上がったもの(隆起)で、腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに大きく分けられます。 腫瘍性ポリープの大部分は良性で、腺腫(せんしゅ)と呼ばれますが、大きさが増すに従って部分的に小さながんを伴っていることが多くなり、それは腺腫内がんと呼ばれています。すなわち、腺腫の一部は放っておくと、がんになることがあります。腺腫が前がん病変とも呼ばれるのはこのためです。 |
蛋白漏出性胃腸炎 |
蛋白漏出性胃腸炎とは、血漿蛋白、とくにアルブミンが消化管内に異常にもれ出ることによって起こる低蛋白血症を主徴とする症候群です。この病気は以前、本態性低蛋白血症と呼ばれていましたが、メネトリエ病の症例に放射性ヨードで標識したアルブミンを静注後、採取した胃液中に血漿アルブミンが異常漏出していたことが報告され、本症の概念は確立しました。
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腸閉塞 |
腸閉塞とは、食べ物や消化液の流れが小腸や大腸で滞(とどこお)った状態、すなわち内容物が腸に詰まった状態が腸閉塞です。腸が拡張して張ってくるため、おなかが張って痛くなり、肛門の方向へ進めなくなった腸の内容物が口の方向に逆流して吐き気を催し、嘔吐したりします。腸閉塞は、吐き気・嘔吐を伴う腹痛が現れる最も代表的で一般的な病気です。 原因が腸の外側にある場合と、内側にある場合があります。 |
虚血性腸炎 |
虚血性腸炎とは、大腸に栄養を送る血管の血流が不足すると、腸管が虚血となり、粘膜の浮腫、出血、潰瘍などが出現します。血流が減少する原因は、もともと血管に動脈硬化性の変化があるところに、便秘による腸管内圧の上昇などが加わるためと考えられています。高齢者や、糖尿病・膠原病・血管炎などを基礎疾患としてもつ場合に多くみられます。 |
放射線性大腸炎 |
放射線性大腸炎は、婦人科や泌尿器科の悪性腫瘍(子宮がん、卵巣がん、前立腺がんなど)に対して行われた放射線治療の副作用として生じる腸管の障害で、腸管粘膜の壊死(えし)が起こり、ひどい下痢などを引き起こします。頻度としては、子宮類内膜腺がん治療後に発症するものが最も高く、放射線治療が行われた子宮がんの5~15%に生じるといわれています。 |
潰瘍性大腸炎 |
潰瘍性大腸炎とは、大腸粘膜が炎症を起こしてただれ、びらんや潰瘍を形成します。症状は粘血便(ねんけつべん)、下痢、腹痛などです。20~30代の若年成人に多く発症しますが、まれに50~60代の人にもみられます。いったんよくなったように見えても、数カ月から数年後に悪化することがあります。
もともと潰瘍性大腸炎は、欧米人に多く日本人には少ないと考えられていましたが、最近、日本でも急速に患者数が増えています。 |
腸結核 |
腸結核とは、結核菌が腸に侵入し、炎症を起こして潰瘍を形成する病気です。腹痛、下痢、発熱、体重減少などがみられますが、症状があまりはっきりしない場合もあります。結核というと過去の病気と思われがちですが、決して減少しているわけではありません。抵抗力の落ちた高齢者や糖尿病、腎不全などほかの病気をもっている人に多く発症します。 |
宿便性腸炎
(宿便性潰瘍) |
宿便性腸炎の病態は、高度の便秘が腸内に貯留することにより、腸の動き(蠕動)が亢進したり、多量の宿便が直腸の壁を圧迫したりして、深い潰瘍をつくることがあります。 |
過敏性腸症候群 |
過敏性腸症候群とは、腸の検査や血液検査で異常が認められないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感を伴って、便秘や下痢が長く続く病気です。以前は過敏性大腸(かびんせいだいちょう)といわれていましたが、小腸を含めた腸全体に機能異常があることがわかってきたため、過敏性腸症候群と呼ばれるようになりました。 |
大腸憩室症 |
大腸憩室症(急性憩室炎)とは、大腸憩室である大腸粘膜の一部が腸管内圧の上昇により嚢状(のうじょう)に腸壁外に突出したもので、大腸憩室が多発した状態を大腸憩室症といいます。憩室壁が腸壁の全層からなる真性(先天性)憩室と、筋層を欠く仮性(後天性)憩室に分けられますが、大腸憩室の大部分は仮性憩室で、比較的高齢者に多い病気です。 |
家族性大腸
ポリポーシス |
家族性大腸ポリポーシスは、数百から数万個のポリープが発生する。ポリープが発生し始めるのは10歳前後であり、以降は時間の経過とともに数と大きさが増大する。このポリープから大腸癌が発生する。15歳前後から発生が見られ、40歳では50%、60歳ではほぼ100%の患者に大腸癌を発生する。 |
消化吸収不良症候群 |
消化吸収不良症候群は、とくに脂肪の消化吸収が阻害された病態をいいます。この病態により障害の程度や持続期間によって低栄養状態を来すことがあります。 この病態は様々な疾患により引き起こされますが、①栄養素の吸収過程自体の異常に基づく「原発性吸収不良症候群」と、②原因となる病気によって二次的に起こる「続発性吸収不良症候群」に大きく分けることができます。臨床において、後者によるものが大部分を占めています。 原発性吸収不良症候群の代表的な病気に「スプルー」、「腸酵素欠乏症」があります。 |