肝臓の血液検査一覧
GOT(AST)・GPT(ALT)
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正式名 |
GOT(AST):アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
GPT(ALT):アラニンアミノトランスフェラーゼ |
基準値 |
GOT(AST):10~40U/L GPT(ALT): 6~40U/L
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何がわかる? |
多くの臓器、特に心臓、肝臓、筋肉、腎などの細胞に含まれている酵素です。これらの臓器が障害され、細胞が破壊されると、GOTは血液中に放出され、血清中の値が高くなります。
•肝臓のみならず、心臓や筋の破壊や壊死の有無及びその程度をみることが出来ます。
•高値を示す病気は、肝障害、心筋梗塞、心筋症、骨格筋の病気などです。 |
異常値 何を疑う? |
「GOTが増えた場合」
・心筋梗塞
・進行性筋ジストロフィー
「GOTとGPTが増えた場合」
・急性肝炎:GOT,GPTとも非常に増える
・慢性肝炎・脂肪肝:GPTがGOTより高いのが特徴
・肝硬変・肝臓癌:GOTがGPTより高いのが特徴
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どうしたらいい?
日常生活は? |
「肝臓病の特効薬はありません」
①食事療法
・基本は、高蛋白、高ビタミン、高カロリー食で、脂肪は少な目にします。
②運動制限
・軽度上昇の時は特に制限の必要はありませんが、運動により肝臓の血液流量は減少し悪影響を与えますので、中等度以上の上昇では、なるべく安静が必要です。
③アルコール
基本的には、禁酒です。アルコール性肝炎は、日本人では1日に日本酒で2~3合以上、またはビール大びん2~3本以上の飲酒で、10~20年で出現します。通常γ-GTPの上昇がつづき、やがてGOT,GPTが上昇してきます。
*脂肪肝の原因は栄養過剰、アルコール、肥満、糖尿病などです。予防や治療にはこれらをなくすことが必要です。
*正常値より高い値を示した場合、原因、現在の病気、進行具合などを詳しく調べてもらってください。
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アルカリフォスファターゼ(ALP)
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正式名 |
アルカリフォスファターゼ(ALP)
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基準値 |
100~325 IU/L
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何がわかる? |
多くの臓器、特に心臓、肝臓、筋肉、腎などの細胞に含まれている酵素です。これらの臓器が障害され、細胞が破壊されると、GOTは血液中に放出され、血清中の値が高くなります。
•肝臓のみならず、心臓や筋の破壊や壊死の有無及びその程度をみることが出来ます。
•高値を示す病気は、肝障害、心筋梗塞、心筋症、骨格筋の病気などです。 |
異常値 何を疑う? |
「高値の場合」
・肝・胆道の病気:急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝うっ血
・ベーチェット病
・骨疾患
・慢性腎不全
・甲状腺機能亢進症
「低値の場合」
・貧血
・肝萎縮
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どうしたらいい?
日常生活は? |
高値を示した場合、念のため病院などで詳しく調べてもらってください。 •軽い上昇で、他の肝機能などで異常がない場合は、定期的な検査を繰り返して経過観察をしてください。 |
乳酸脱水酵素(LDH)
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正式名 |
乳酸脱水酵素(LDH)
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基準値 |
120~240U/L
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何がわかる? |
この酵素は、ほとんどの臓器の細胞にあるもので、この酵素活性が上昇しているのは、どこかの臓器に損傷がある事を示しています。
主に上昇するケースは
1.肝臓の病気:肝炎、肝硬変、胆道の病気
2.悪性腫瘍:とくに転移があるとき
3.血液の病気:白血病、リンパ腫
4.心臓や肺の病気:心筋梗塞、心不全、肺梗塞
などがあります。
*どこの臓器が病気かは、ALPと同じようにアイソザイム検査を行えばわかります。5種類のアイソザイムがあり、心臓や赤血球はLDH1・2、肝臓や筋肉はLDH4・5を主な成分としているからです。高値を示した場合、病院などで詳しく調べます。
•正常値は、測定法や測定機関によって異なりますので注意してください。 |
異常値 何を疑う? |
「高値の場合」
・急性肝炎
・心筋梗塞
・白血病
・悪性貧血
・溶血性貧血
・筋ジストロフィー
・腎不全
・膵臓炎
・リウマチ
・癌:肝臓癌、肺癌、膵臓癌、大腸癌
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どうしたらいい?
日常生活は? |
•高い値がみられた場合、他の検査の値などを見て総合的に判断しましょう。
•何か病気の疑いがある場合は、病院などで、アイソザイム検査など詳しい検査を受けて下さい。
•肝臓病の疑いがあるときは、自分で、GOTの項に示した予防対策を心がけてください。 |
コリンエステラーゼ(ChE)
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正式名 |
コリンエステラーゼ(ChE)
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基準値 |
男性 234~493 IU/L
女性 200~452 IU/L
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何がわかる? |
この酵素は、神経と赤血球に分布するものと、血液や肝にあるものの2つがあり、検査では後者を測定しています。
•血清のコリンエステラーゼ(ChE)は、肝で合成され、血液中に分泌されており、肝臓での蛋白合成能力を反映します。したがってこの酵素は、肝臓がどのくらい働いているかを示します。肝障害では活性は低下します。 •一方、ネフローゼや脂肪肝などで肝臓が刺激された状態ですと、値は高まります。 |
異常値 何を疑う? |
「低値の場合」
・肝臓病:慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌
・悪性腫瘍
・膠原病
・有機リン酸農薬中毒
・低栄養
「高値の場合」
・ネフローゼ症候群
・脂肪肝
・甲状腺機能亢進症 |
どうしたらいい?
日常生活は? |
低値の場合、他の肝機能検査の値をみながら、判断しましょう。
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γ(ガンマー)-GTP
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正式名 |
γ-グルタミールトランスペプチダーゼ
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基準値 |
男性 80 U/L
女性 48 U/L
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何がわかる? |
肝臓などの細胞の膜にある酵素で、アルコールや種々の肝臓の病気で合成が高まり、血液中へ出ていき、血清中の値が高くなります。
•高い場合の多くは、アルコールによるものですが、種々の肝臓病(脂肪肝、肝炎、肝硬変、胆汁うっ滞、肝癌など)でも高くなります。
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異常値 何を疑う? |
「高値の場合」
・急性肝炎
・アルコール性肝炎
・肝臓癌
・閉塞性黄疸 |
どうしたらいい?
日常生活は? |
アルコールの適正摂取:アルコール性肝障害の場合、他の肝機能より早く高値を示します。1日、日本酒で2合以上の常習飲酒者では、約3分の1が高値を示します。禁酒により1ヶ月で約2分の1の値となります。常習飲酒者は適正飲酒を心がけましょう(1日に日本酒で1合、ビールは大瓶で1本、ウイスキーは水割りで1~2杯以内、週1~2日の休肝日)。
•他の肝機能検査で異常のある場合、アルコールの適正化でも下がらない場合は、詳しい肝臓、膵臓、胆のう、心臓の検査を受けて下さい。 |
総蛋白と蛋白分画
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正式名 |
血清総蛋白(TP)
蛋白分画
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基準値 |
血清総蛋白(TP):6.5~8.2
蛋白分画:
血清 %
Albumin 58.5~71.0
Globurin
α1 1.6~3.4
α2 5.5~10.0
β 7.0~11.0
γ 11.0~22.0
A/G 1.40~2.40
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何がわかる? |
血清の中には、アルブミン、免疫グロブリン、そのほかおよそ80種類の蛋白があり、体の働きに役立っています。これらの蛋白の合成の異常、分解の異常、消費または漏出があると、増えたり減ったりします。
•血清総蛋白の増減は、次の場合にみられます。 1.増加する場合:下痢、嘔吐などによる血液の濃縮、急性・慢性の炎症、悪性腫瘍、免疫グロブリンの異常
2.減少する場合:栄養不良、蛋白の漏出(火傷、ネフローゼ、腹水など)、分解の亢進(甲状腺機能亢進症)、合成の低下(肝硬変)
•蛋白のうち、どの蛋白の増減があるかは、分画を調べることによって知ることが出来ます。通常、5つの分画に分けられます。 |
異常値 何を疑う? |
「高い場合」
・高蛋白血症
・慢性肝炎
・肝硬変
・悪性腫瘍
・脱水症
・多発性骨髄腫
「低い場合」
・低蛋白血症
・肝臓障害
・ネフローゼ症候群
・栄養不良 |
どうしたらいい?
日常生活は? |
必要に応じて、病院などで詳しく調べてもらってください。 |
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
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正式名 |
硫酸亜鉛混濁試験
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基準値 |
3.0~12.0 units |
何がわかる? |
血清中の蛋白の一分画であるγグロブリンを簡易に測定する方法です。
•したがって、γグロブリンが増加する病気の判定に用いられます。とくに肝障害が慢性化し、肝硬変となるとγグロブリンが増加しますので、肝機能検査の一つとして、慢性化ないし肝硬変の指標として用いられています。 |
異常値 何を疑う? |
「高値の場合」
・肝臓病:急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌
・膠原病
・悪性腫瘍
「低値の場合」
・胆のううっ滞症
・糖尿病
・転移がん
・悪性高血圧
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どうしたらいい?
日常生活は? |
高値の場合、まず他の肝機能検査や、前の病気などを考えて判定します。
*現在では、血清蛋白分画など詳しい検査もできますので、これらを加えて病院で詳しく調べてもらってください。
•少しの上昇は、とくに高齢者では慢性の感染症などによる事が多く、他の検査で異常がなければ経過をみます。 |
チモール混濁試験(TTT)
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正式名 |
チモール混濁試験
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基準値 |
4.0以下 units |
何がわかる? |
硫酸亜鉛混濁試験と同様に、血清中のγグロブリンの量をみるものです。
•したがって、γグロブリン、とくに炎症の早期に出現する免疫グロブリンMが増加する病気では、値は上昇します。 |
異常値 何を疑う? |
肝臓病:急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、脂肪肝
•高脂血症
•膠原病 |
どうしたらいい?
日常生活は? |
軽度の上昇では、年齢や過去の結核などの慢性炎症の有無などで判断し、経過を見る。
•高度の上昇では、病院などで詳しく肝機能、血清蛋白の分画などを調べてもらってください。
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ビリルビン
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正式名 |
ビリルビン
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基準値 |
0.2~1.2 mg/dL |
何がわかる? |
ビリルビンは赤血球の中のヘムなどが分解してできた黄色の物質です。まず肝臓に取り込まれ、水にとけやすい型となって、胆管より十二指腸に排泄されます。肝臓に取り込まれる前の非水溶性のビリルビンを間接ビリルビン、肝臓で水溶性となったものを直接ビリルビンとよび、両者を合わせて総ビリルビンとよんでいます。
①血清中にビリルビンが増加すると皮膚は黄色になり、これを黄疸とよんでいます。
②血清中に間接ビリルビンが増加するのは
1.生成の増加:溶血が著しい場合
2.肝臓に取り込まれない場合:ジルベール病など
3.肝臓で水溶性にできない場合
があります。
③血清中に直接ビリルビンが増加するのは
1.肝障害:肝炎、肝硬変など
2.胆汁うっ滞
3.閉塞性黄疸:胆石などによる胆管の閉塞
があります。
④総ビリルビンはいずれかが増えると増加します。
⑤健診では総ビリルビンをだけを測りますが、いずれにしろ肝障害、胆道の閉塞の有無を中心とした検査指標となります。
•総ビリルビンが高い場合、病院などで、直接型か間接型か調べると、原因がわかりやすくなります。
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異常値 何を疑う? |
・肝臓病:肝炎、肝硬変など
・胆石
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どうしたらいい?
日常生活は? |
顔が黄色の時、黄疸かどうかを決めるのに役立ちます。ビリルビンが高ければ黄疸です。
•上昇が軽度で、肝機能などに異常が無い場合は経過をみます。体質的なものもあります。 •中~高度の上昇では、必要により入院して詳しく調べてもらってください |
LAP(ロイシンアミノペプチダーゼ)
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正式名 |
ロイシンアミノペプチダーゼ
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基準値 |
35~75 U/L |
何がわかる? |
LAPとは、ロイシンなどの蛋白質を分解する酵素で、腎臓、肝臓、腸管、脳、膵臓、子宮、睾丸などの組織細胞に含まれています。
•一般にLAPと呼ばれるのは、複数の物質を合わせたものの測定値で、その中の1つであるロイシンアミドだけを測定する方法もあります。
•LAPは胆道から排泄されるので、正常な人は胆汁中に多いのですが、胆汁うっ滞がおこると、血液中に増えます。
•したがって、LAP値は肝臓や胆道の病気を診断する手がかりとなり、また病気の経過をみるうえでも重要です。 |
異常値 何を疑う? |
・癌:肝癌、胆道癌、膵癌
・薬剤性肝障害・ウイルス性肝炎
・急性肝炎
・慢性肝炎・代償性肝硬変
・飲酒や妊娠
・子宮や卵巣の癌 |
どうしたらいい?
日常生活は? |
①LAPだけでは、治療の方針が立てられないので、他の肝機能検査の結果と組み合わせて総合的に判断されます。
②LAPが境界値で、他の検査で正常な場合は、積極的な治療は行われませんが、再検査をして経過をみます。
③胆汁がうっ滞して、LAP以外の胆道酵素が増加する場合は、超音波検査やCT検査などで、肝臓内胆管が拡張していないか、また肝膿瘍性病変がないかを検査します。
④さらに胆道造影検査を行い、胆石や胆管炎、胆嚢癌、膵癌などを調べます。胆道系に異常がなくても肝臓内で胆汁がうっ滞している可能性もあるので、急性の時は、薬剤性肝障害やウイルス性肝炎についても調べ、慢性の時は、原発性肝硬変などについて調べます。
⑤肝臓以外で胆汁うっ滞して、強度の黄疸が現れた場合は、診断と治療をかねて、肝臓から胆管に管を入れて胆汁を取り除く、経皮経肝胆道ドレナージを行うことがあります。 |
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