肝硬変の症状肝硬変の初期症状は漠然としており、肝硬変になっていることを初期の段階で症状から見極める事は極めて困難です。
肝硬変の症状としては、食欲不振・吐き気・腹部膨満感、下痢、倦怠感などが代表的といわれています。なお、肝硬変の進行と共に、軽い黄疸(おうだん)の症状がでることがあります。
肝硬変の検査
血液検査 |
ALT(GPT) |
GOTは肝臓や心臓の筋肉、骨格筋、腎臓などに多く含まれる酵素です。肝細胞障害などで上昇します。 |
AST(GOT) |
GPTは肝臓に多く含まれる酵素で、この値が高いと血液の流れが鈍く、脂肪肝や肝炎になりやすいです。 |
ALP (アルカリフォスファターゼ) |
γ-GTPとともに胆道系酵素と呼ばれ、肝臓や胆道系の障害時、骨病変で上昇します。ALTとも略されます。 |
γ-GT(γ-GTP) |
胆道系酵素と呼ばれ、胆汁うっ滞のときに上昇します。アルコール性の肝障害でも上昇する人が多いです。 |
LDH (乳酸脱水素酵素) |
GOTやGPTと同様に肝臓や肺、筋肉、血球に含まれる酵素です。特に肝臓に多く含まれます。 |
ウイルスマーカー |
原因ウイルスの特定診断を行います。 |
血清ビリルビン |
胆汁に含まれる色素で、赤血球のヘモグロビンから生成されます。総ビリルビンが上昇すると黄疸が見られます。 |
アルブミン |
肝臓で作られるタンパク質の代表。肝硬変になると多くの場合、3.5g/dl以下に低下する。 |
血小板 |
止血の際に働く血球の代表。肝硬変になると10万/mm3以下に低下することが多い。 |
コリンエステラーゼ |
肝臓で作られるタンパク質。肝硬変では低下する。 |
プロトロンビン時間 |
血液が固まる時間を表す。肝硬変では血液凝固因子が低下するためプロトロンビン時間が延長する。 |
精密検査 |
超音波(エコー) |
様々な方法を利用して、視覚的診断をおこないます。 |
X線 |
CT(コンピュータ断層撮影) |
MRI(磁気共鳴画像診断) |
肝生検 |
肝臓の組織を採取し、がん細胞などの有無を調べます。 |
肝硬変の治療~
肝硬変そのものを治療できる薬剤はほとんどありません。
- B型肝炎ウイルスが原因の場合には、エンテカビルやラミブジンという抗ウイルス薬を内服することによって肝機能の改善が期待できます。
- C型肝炎ウイルスが原因の場合には、ウイルス型が2型であるか、1型でもウイルス量が少ない場合にはインターフェロンβという抗ウイルス薬(注射)による治療が健康保険で認められています。
- 肝硬変では分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)が低下するため、これを薬として補充することによって肝臓でつくられるアルブミンなどのタンパク質が改善します。
- 肝移植:腹水や黄疸が一般的な治療によって改善しない場合には、基準を満たせば肝移植を受けられるようになりました。
肝硬変による合併症に対する治療
(1) 食道静脈瘤(図2)・胃静脈瘤
肝臓が硬くなり小腸や大腸から流れ込む門脈と呼ばれる血管の圧力が高くなると、食道や胃の周りに逃げ道ができます。これが静脈瘤です。静脈瘤はいったん破裂すると消化管の中に大出血を起こすため、吐血や下血がみられます。出血の程度によっては生命に危険がおよぶこともあります。 (2) 肝性脳症
大腸内の細菌によってアンモニアなどの老廃物が作られ、門脈を通って肝臓へ運ばれます。通常は肝臓の細胞で処理されますが、肝硬変では肝機能低下のため十分な処理能力がなくなることと、門脈からの逃げ道を通って肝臓を素通りする結果、アンモニアなどの老廃物が血液中にたまり、脳のはたらきを低下させると肝性脳症が起こります。
- 1度:軽度の障害なので気がつきにくい。昼夜逆転などの症状がある。
- 2度:判断力が低下する。人や場所を間違えるなどの症状がある。
- 3度:錯乱状態や混迷に陥る。
- 4・5度:意識がなくなる。
日常生活でよく気をつけることとして、1)便秘にならないこと、2)風邪などの感染症がきっかけになるため、手洗いやうがいを励行すること、3)タンパク質を取り過ぎないことなどが守って下さい。
<治療法>
- ラクツロースなどの二糖類の薬を内服して血中アンモニアを下げる。
- 分岐鎖アミノ酸を含む内服治療薬、腸内細菌を死滅させる抗生物質を飲む。
(3) 腹水
肝硬変では血液中のアルブミンが低下し、門脈の圧力が高くなるために発生します。少量の場合には下腹部が膨満する程度ですが、大量の腹水では呼吸困難を起こすこともあります。
<治療法>
- 1)減塩食:1日に摂取する塩分量を7g以下に減らす。
- 2)利尿薬内服:フロセミドやスピロノラクトンなどの利尿薬を内服する。
- 3)アルブミンの点滴投与
呼吸困難感や腹部膨満感が非常に強い場合以外には、針を刺して腹水を抜くことはしません。何故なら、腹水の溜まる原因を十分に治療しなければ、いったん腹水を抜いても、またすぐ溜まるからです。
~肝硬変の予防~肝硬変を予防するという意味では、肝臓に対して負担を掛けないということが重要になります。特に、一日に日本酒換算で3合以上のアルコールを日常的に飲んでいる方は、休肝日を作るなどして肝臓を休ませましょう。
この他、タンパク質の一種である「タウリン」は肝臓機能を強化する働きがありますので、これらを多く含むシジミやアサリ、カキ(牡蠣)、イカ(烏賊)などを普段から摂取するようにするのも有効です。
肝硬変によい漢方薬 漢方薬は肝臓病の原因や種類で使い分ける事はありません。症状や体質を重視し処方を選ぶ事が基本と成ります。肝臓病の初期から中期にかけては柴胡剤という分類の漢方薬の一群がとても有効です。
初期から中期にかけて使用します |
大柴胡湯
(だいさいことう) |
比較的、体力のある方に処方されます。(脂肪肝に使用します) |
小柴胡湯
(しょうさいことう) |
体力が中程度の方に処方されます。(脂肪肝に使用します) |
柴胡桂枝湯
(さいこけいしとう) |
体力が中程度の方に処方されます。 |
補中益気湯
(ほちゅうえっきとう) |
体力がない方や高齢者 |
茵陳五苓散
(いんちんごれいさん) |
黄疸やむくみなどがある |
茵陳高湯
(いんちんこうとう) |
黄疸やむくみなどがある |
肝炎の末期や肝硬変の方に使用します |
柴芍六君子湯
(さいしゃくりっくんしとう) |
体力も補う目的 |
十全大補湯
(じゅうぜんだいほとう) |
体力も補う目的 |
肝硬変によいサプリメント漢方薬以外の民間薬や健康食品にも、肝臓病に良いものが多くあります。ウコンは香辛料としても使いますが、肝臓の治療補助としてもすぐれています。田七人参(でんしちにんじん)も肝臓病にはとても良い事が多く、又体力も補えるので体質にあまり関係なくおすすめできます。どちらも安全性が高く比較的安価なものなので、気軽に試してみると良いと思います。
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胆石症 |