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膵臓の病気が疑われる際に行われる検査

膵臓の病気が疑われる際に行われる検査

 膵臓は、消化に必要な酵素を十二指腸に分泌します。そしてこれらの酵素は、健康な体でも血液中に少量存在します。膵臓の炎症性の病気は、急性と慢性に分けられます。

急性膵炎では、激しい腹痛が突然に起こります。
そして呼吸不全や細菌感染を起こし、敗血症から死に至ることがある恐い病気です。また慢性膵炎は、糖尿病を起こしたりもします。

膵炎の症状は、腹膜炎、胆汁うっ帯が原因となる肝障害、肺水腫、不整脈などが起こります。

膵臓機能の検査項目
 膵臓の病気では、血液と尿検査を行います。アミラーゼ、尿素窒素(BUN)、尿、アルブミン、カルシウム、リパーゼ、グルコース、ALT、ALKP、コレステロール、トリグリセリドがあります。



膵臓の検査一覧

膵臓の血液検査一覧(リンク)

血清アミラーゼ尿素窒素カルシウムアルブミングルコースアルカリフォスファターゼ(ALP)GOT(AST)・GPT(ALT)コレステロールトリグリセリド

膵臓の血液検査項目

血清アミラーゼ

正式名  S-AMY(amylase,serum)
基準値  37~125(U/L)
検査の目的
 膵臓や唾液腺より分泌される消化酵素。急性膵炎や耳下腺炎で上昇し、高値をみた時はアイソザイムにより由来臓器を推定する。
 
何がわかる?
アミラーゼは,そのほとんどは膵と唾液腺由来のものである。血清および尿中アミラーゼの測定は血中への酵素逸脱の程度を表すので,主として膵疾患の診断に重要である。よって膵炎,膵管内圧上昇などが起こると逸脱が増加する。この変化は,膵内外分泌機能や膵管などの変化よりも早期に起こり,病勢をよく反映するので,膵疾患のスクリーニング,早期診断,経過観察に役立つ。しかし,アミラーゼは膵ばかりでなく唾液腺でも多く産生されるので,鑑別にはアミラーゼアイソザイムの分別定量が必要である。
  
異常値 何を疑う?

検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

【検査値が正常範囲外であった時に考えられる疾患および原因】
検査異常値 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値
膵疾患、胆道十二指腸疾患、腎不全、唾液腺疾患、アミラーゼ産生腫瘍、マクロアミラーゼ血症、肝疾患、高唾液型アミラーゼ血症
基準値より低値
肝硬変、唾液腺摘出、糖尿病(重症)、膵摘出

【関連項目】
エラスターゼ1、リパーゼ 〈血清〉、リパーゼ 〈尿〉、トリプシン、膵分泌性トリプシンインヒビター(PSTI)、膵ホスホリパーゼA2(膵PLA2)、PFDテスト
   

尿素窒素

正式名 BUN
基準値 8.0~22.0(mg/dL)
検査の目的
一般的な血液検査になります。腎臓の機能を確認する検査です。
ここでの検査は、上記のアミラーゼの由来の特定検査のふるいにかける検査です。
 
何がわかる?
血中の尿素に含まれる窒素(尿素窒素:BUN)を調べる事で腎機能に異常が無いかを調べています。尿素窒素は、腎臓でろ過されて尿中へ排出されますが、急性や慢性の腎不全などで腎臓の働きが低下すると、ろ過しきれない分が血液中に残り尿素窒素の値が高くなります。これは、クレアチニン,尿酸などとともに尿素窒素はタンパク質を代謝した際の生成物であり、尿素窒素はアミノ酸の脱アミノによって生じたアンモニアを無毒化する為に肝臓においてCo2と合成され生成されます。これを尿素サイクルといいますが肝臓で合成された尿素窒素は最終的には、腎糸球体から濾過され一部尿細管で再吸収されたのちに尿中に排泄されます。
尿素窒素は、タンパク質の過剰摂取や大量の消化管出血、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、脱水症状の場合も数値は上昇する傾向があります。尿素窒素(BUN)検査では血中の尿素に含まれる窒素分調べる事で腎機能の低下などの疾患の診断に使われます。しかし、尿素窒素(BUN値)は、年齢、性別、季節や食事や運動です値が変化しますので異常値だからといって腎機能の異常とはいいきれません。異常値の場合には原因を特定する為の精密検査を実施いたします。
  
異常値 何を疑う?

検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、異常値が出た場合には、その原因を特定する為に診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

【検査値が正常範囲外であった時に考えられる疾患および原因】
検査異常値 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値
高タンパク食、血色素尿症、癌、外科的侵襲、アミロイドーシス、多発性骨髄腫、痛風、尿毒症、薬剤投与(サイアザイド,エタクリン酸,TC系抗生剤など)、腎不全、脱水症
基準値より低値
肝不全、妊娠、尿崩症(多尿)、劇症肝炎、肝硬変(腹水貯留)、低タンパク食

【備考】
血中尿素窒素(BUN)の検査データが異常値を示しても腎臓機能の異常や障害の程度を正確に把握する事ができません。異常値の場合には原因を特定する精密な検査が必要になります。

【関連項目】 
クレアチニン(CRE)、シスタチンC、蛋白定量、尿酸(UA)、β2マイクログロブリン 〈血清〉、β2マイクログロブリン 〈尿〉、蛋白分画(PR-F)、NAG、無機リン(P)、浸透圧 〈血清〉、PSPテスト(フェノールスルフォンフタレイン排泄試験)
   
 

カルシウム

正式名 カルシウム
基準値 8.8~10.2 mg/dl
検査の目的 各種の内分泌疾患や骨代謝異常の有無を推測できる。
何がわかる? ・内分泌疾患が疑われたとき
・骨代謝障害が疑われたとき
・Ca異常が疑われたとき

異常値 何を疑う?

高値の場合


  内分泌異常:原発性副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、
           ビタミンD中毒、サルコイドーシスなど
  骨代謝異常:多発性骨髄腫、悪性腫瘍の骨転移など
  その他:褐色細胞腫、アジソン病、腎不全など




低値の場合


  内分泌異常:副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、
           アミロイドーシスなど
  その他:急性膵炎、敗血症など

 

アルブミン

正式名 albumin(Alb)
基準値 3.8~5.3 g/dl
検査の目的
一般的な血液検査になります。
肝臓で合成される血中の主たる輸送体蛋白。栄養状態の悪化や肝障害の程度の検査です。
 

何がわかる? アルブミンは肝で合成され血清総蛋白の約60%を占める成分である。血清中の蛋白質の中では最も量が多い。アルブミンは膠質浸透圧を維持し、尿酸,遊離脂肪酸,サイロキシン,Ca,Cu,Zn,そのほか各種薬剤や色素などの輸送体として働いています。また、アルブミンは肝でのみ合成されるので、肝障害の程度を判定するのにも有用である。一方、腎障害など、体外に失なわれる病態では低下する。
異常値 何を疑う?
検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

【検査値が正常範囲外であった時に考えられる疾患および原因】
検査異常値 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値
脱水症、血液濃縮、肝炎の回復期
基準値より低値
腎不全、本態性低タンパク血症、蛋白漏出性胃腸症、体腔液貯留、全身性浮腫、水血症、甲状腺機能亢進症、吸収不良症候群、肝硬変、感染症、炎症性疾患、栄養不良、悪性腫瘍、ネフローゼ症候群、重症肝障害、先天性無アルブミン血症
*アルブミン値が正常の場合にカルシウムが低いときのみ、膵炎の指標となります。


グルコース

正式名 GU
基準値 負荷前70~109(mg/dl)
検査の目的 一般的な血液検査になります。
血液中のグルコース(糖)を測定する事で血糖値が高いか調べます。血糖値が高い疾患としては、糖尿病があります。
何がわかる? 血糖とはブドウ糖(グルコース)の事をいい、脳などの栄養源で生命を維持する為の大切な栄養源であります。血糖値は食事数時間後に高い値になり、その後徐々に下がるが一定水準より下回らない様にホルモンが包摂をしている。血糖を上昇させるホルモンにはインスリンであり、不足すると高血糖になり、過剰では低血糖になる。またインスリンの拮抗ホルモンにはグルカゴン,コルチゾール,カテコールアミンなどがある。拮抗ホルモンの過剰によっても高血糖になり、不足すると低血糖になる。インスリン欠乏による高血糖を示す疾患は糖尿病であり、低血糖を示す代表的疾患は、インスリノーマ,脳下垂体不全症であります。高血糖がみられ,糖尿病が疑われたら、75gグルコース負荷試験を行う。早朝空腹時に75gグルコース液を飲ませて30分ごとに採血し、2時間までの血糖曲線を測定する。前値が140mg/dl以上、または2時間値が200mg/dl以上なら糖尿病型と判定をします。

異常値 何を疑う?
検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

【検査値が正常範囲外であった時に考えられる疾患および原因】
検査異常値 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値
脳腫瘍クモ膜下出血、情緒的ストレス、外傷、火傷、悪性高血圧症、巨人症、サイアザイド系降下症、狭心症、クッシング症候群、骨折、手術、心筋梗塞、代謝性疾患、中枢神経系疾患、糖尿病、妊娠、副腎髄質腫瘍、末端肥大症、膵疾患、甲状腺機能亢進症、内分泌性疾患
基準値より低値
下垂体機能低下症、胃癌、アジソン病、甲状腺機能低下症、インスリノーマ、副腎皮質機能低下症、肝疾患、高インスリン血症、食事性・機能的反応性低血糖、腎性糖尿、繊維腫及び肉腫、中枢神経疾患、小児特発性低血症、脳下垂体不全症

アルカリフォスファターゼ(ALP)

正式名

アルカリフォスファターゼ(ALP)

基準値 100~325 IU/L
検査の目的 多くの臓器、特に心臓、肝臓、筋肉、腎などの細胞に含まれている酵素です。これらの臓器が障害され、細胞が破壊されると、GOTは血液中に放出され、血清中の値が高くなります。
•肝臓のみならず、心臓や筋の破壊や壊死の有無及びその程度をみることが出来ます。
•高値を示す病気は、肝障害、心筋梗塞、心筋症、骨格筋の病気などです。
何がわかる? 「高値の場合」
・肝・胆道の病気:急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝うっ血
・ベーチェット病
・骨疾患
・慢性腎不全
・甲状腺機能亢進症

「低値の場合」
・貧血
・肝萎縮
異常値 何を疑う?
高値を示した場合、念のため病院などで詳しく調べてもらってください。
•軽い上昇で、他の肝機能などで異常がない場合は、定期的な検査を繰り返して経過観察をしてください。

GOT(AST)・GPT(ALT)

正式名 GOT(AST):アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
GPT(ALT):アラニンアミノトランスフェラーゼ
基準値 GOT(AST):10~40U/L
GPT(ALT): 6~40U/L
検査の目的 多くの臓器、特に心臓、肝臓、筋肉、腎などの細胞に含まれている酵素です。これらの臓器が障害され、細胞が破壊されると、GOTは血液中に放出され、血清中の値が高くなります。
•肝臓のみならず、心臓や筋の破壊や壊死の有無及びその程度をみることが出来ます。
•高値を示す病気は、肝障害、心筋梗塞、心筋症、骨格筋の病気などです。
何がわかる? 「GOTが増えた場合」
・心筋梗塞
・進行性筋ジストロフィー

「GOTとGPTが増えた場合」
・急性肝炎:GOT,GPTとも非常に増える
・慢性肝炎・脂肪肝:GPTがGOTより高いのが特徴
・肝硬変・肝臓癌:GOTがGPTより高いのが特徴
異常値 何を疑う?
「肝臓病の特効薬はありません」
①食事療法
・基本は、高蛋白、高ビタミン、高カロリー食で、脂肪は少な目にします。

②運動制限
・軽度上昇の時は特に制限の必要はありませんが、運動により肝臓の血液流量は減少し悪影響を与えますので、中等度以上の上昇では、なるべく安静が必要です。

③アルコール
 基本的には、禁酒です。アルコール性肝炎は、日本人では1日に日本酒で2~3合以上、またはビール大びん2~3本以上の飲酒で、10~20年で出現します。通常γ-GTPの上昇がつづき、やがてGOT,GPTが上昇してきます。

*脂肪肝の原因は栄養過剰、アルコール、肥満、糖尿病などです。予防や治療にはこれらをなくすことが必要です。
*正常値より高い値を示した場合、原因、現在の病気、進行具合などを詳しく調べてもらってください。

コレステロール

正式名 Total Cholesterol
基準値 150~219(mg/dl)
検査の目的 健康診断や成人病検診など一般的な血液検査です。
何がわかる? 血液中に浮遊しているコレステロール量を測定する事で脂質代謝異常や動脈硬化のリスクを知る事ができます。コレステロールは、上でも説明していますが細胞膜やステロイドホルモンを生成する上で必要な原料です。代謝異常や乱れた食生活で高コレステロール状態になる事は、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが非常に高くなるので注意が必要です。
異常値 何を疑う?
検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

【検査値が正常範囲外であった時に考えられる疾患】
検査異常値 考えられる疾患の名称
高 値
ACTHの長期投与、LCAT欠損症、Weber-christian病、vonGierke病、ストレス、ネフローゼ症候群、下垂体機能低下症、家族性高コレステロール血症、肝癌、急性アルコール性脂肪肝粥状硬化性疾患-冠硬化性疾患、経口避妊薬服用、甲状腺機能低下症、散発性高コレステロール血症、糖尿病、肥満症、閉塞性黄疸、末端肥大症
低 値
アジソン病、α-リポタン白欠損症、悪液質、肝細胞障害、経静脈高カロリー輸液、甲状腺機能亢進症、消化不良症候群、低β-リポタン白血症、貧血、無β-リポタンパク血症 


トリグリセリド

正式名 Total Cholesterol
基準値 70~139(mg/dl)
検査の目的 健康診断や成人病検診など一般的な血液検査です。
脂質代謝と肥満(生活習慣)を判断します。
何がわかる? 中性脂肪(TG)はグリセリンの脂肪酸エステル(トリアシルグリセロール)である。血中TGは各種リポ蛋白のコアに組み込まれた形で運ばれます。リポ蛋白はカイロミクロン(CM),超低比重リポ蛋白(VLDL),中間比重リポ蛋白(IDL),低比重リポ蛋白(LDL),高比重リポ蛋白(HDL)に分画され,CMとVLDLがTGに富みます。CMは外因性(食事由来)TGを,VLDLは内因性(肝合成)TGを転送する。CM,VLDL中のTGは,リポ蛋白リパーゼ(LDL)により脂肪酸とグリセロールに水解され,VLDLはIDLを経て,肝性TGリパーゼ(HTGL)により異化代謝されLDLとなります。血中TGは各種の原発性・続発性高脂血症で異常値を示し,その測定がこれらの病態の診断や治療に有用であります。
異常値 何を疑う?
検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

【検査値が正常範囲外であった時に考えられる疾患および原因】
検査異常値 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値
上昇する疾患 : 尿毒症、ネフローゼ症候群、グリコーゲン蓄積症、Zieve症候群、Weber-Christian病、Cushing症候群、下垂体機能低下症、家族性高リポ蛋白血症(Ⅰ,Ⅱb,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ型)、甲状腺機能低下症、痛風、動脈硬化症、マクログロブリン血症、脳血栓症、末端肥大症、薬剤投与(サイアザイド・経口避妊薬)、膵炎(急性・慢性)、糖尿病
基準値より低値
減少する疾患 : Addison病、悪液質、βリポ蛋白欠損症、ヘパリン投与、心不全、下垂体機能低下症、肝硬変、吸収不全症、急性黄色肝萎縮症、急性中毒性脂肪肝、甲状腺機能亢進症、重症肝実質障害
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