アトピー性皮膚炎の症状
普通は幼小児期に発症し、その症状は年齢とともに変化していきます。乳幼児期には顔面、頭部などにジュクジュクした湿疹を生じますが、学童期には肘、膝の裏などを中心にカサカサした湿疹がみられるようになります。かゆみも強く、引っ掻き傷がたくさんみられます。
合併症として、IgEが病気に関係する他のアトピー性疾患、すなわち喘息(ぜんそく)やアレルギー性鼻炎を伴うこともあります。また、皮膚のバリア機能低下の結果、とびひ、みずいぼ、単純ヘルペス(カポジ水痘様発疹症)など様々な皮膚の感染症がみられます。眼の合併症も重要で、眼のまわりの湿疹を繰り返し叩いたり擦ったりする刺激により、網膜剥離(もうまくはくり)や白内障が生じます。
アトピー性皮膚炎の診断
繰り返す慢性の湿疹病変と皮膚の乾燥症状に加えて、家族歴などをあわせて診断します。血中のIgEの値、あるいは特定の物質に対するIgE抗体の存在(特異的IgE抗体)も参考に測定することはありますが、これは診断に必須のものではなく、あくまでも参考です。
いわゆる原因検索については多くの誤解があります。まず、アトピー性皮膚炎はいろいろな刺激に反応しやすい素因がもとになっている皮膚の病気であって、特定の原因物質によって起こる単なるかぶれではないことを理解していただく必要があります。多くの方が求める原因は1つのものですが、アトピー性皮膚炎においては、かぶれの時のように特定の原因物質を突き止めれば解決というわけにはいきません。アトピー性皮膚炎で生じやすいアレルギー炎症の悪循環を生む誘因となるものは、ダニ、ハウスダスト、細菌など様々なものがあります。これらは、アトピー性皮膚炎の悪化の因子ではあるけれども、特定の原因ではないという認識がむしろ必要です。したがって、血液検査で特異的IgE抗体が陽性の場合も、それが「原因」というより、悪化因子の可能性の1つとして参考程度に考えて下さい。
アトピー性皮膚炎の治療
皮膚に炎症が生じている時には、アレルギー性炎症の悪循環が起こって炎症という火事が広がっているわけですので、これを断ち切るには抗炎症作用と免疫抑制作用を備えた副腎皮質ステロイド薬の外用により早期に消火する必要があります。これで火事による皮膚のダメージを最小限に食い止めることができます。炎症が鎮まれば、当然、消火のための薬剤をずっと使用する必要はありません。こんどは、バリア機能を強くして、刺激が加わっても跳ね返すように保湿剤外用を中心にしっとりした皮膚を保つスキンケアが大事です。
アトピー性皮膚炎は遺伝的な病気なので、何か1つ行えば治ってしまうという根本治療はありません。しかし、遺伝的な病気だから一生治らないというのは大きな間違いです。皮膚のバリア機能だけをとっても年齢とともに強くなっていきます。
アトピー性皮膚炎は年齢とともに自然によくなっていくのがむしろ特徴である病気です。いつの時期に症状が目立たなくなるかということについては、個人差が大きく、学童期までに自然に落ち着く場合が多いのですが、一部の方は成人になったあとも症状が続くことがあります。
しかし、成人の方でも年齢とともに症状は軽くなっていきます。ただし、よくなったといっても、刺激に敏感であるという素質はある程度残ります。例えば洗剤荒れなどの手の湿疹は、ある閾値(いきち)を超えれば誰にでも起こりえますが、アトピー性皮膚炎の素質をもった方ではこういった湿疹が起こりやすいということはあります。したがって、大人になって手に湿疹が出やすいという方の多くは、小さい頃アトピー性皮膚炎があった方です。
いずれにしても、アトピー性皮膚炎は年齢とともに症状が自然に目立たなくなる病気であることは間違いありませんので、決して根本治療という甘言に惑わされず、また対症療法と卑下せずに適切な外用療法を中心とした治療を行って、ごく普通の生活を行っていくことが肝要です。
アトピー性皮膚炎によい漢方薬
①アトピー性皮膚炎増悪期によく使う漢方薬
赤み、痒みがともに激しく強い熱感がある時期は血熱証、熱毒証、湿熱証の皮膚病として清熱解毒、祛湿の治法を使い主として痒み炎症を抑える処方を選びます。
アトピー性皮膚炎増悪期によく使う漢方薬 |
黄連解毒湯 |
芩3.0;黄連・黄柏・山梔子各2.0梔子柏皮湯山梔子3.0;黄柏2.0;甘草1.0 |
茵陳蒿湯 |
茵陳蒿4.0; 山梔子3.0;大黄1.0(適量) |
銀翹散 |
芦根15.0;金銀花・連翹各12.0;淡豆豉・淡竹葉・牛蒡子各9.0;薄荷・荊芥・桔梗各6.0;甘草3.0 |
治頭瘡一方 |
連翹・朮各4.0;防風・川芎各3.0;忍冬・紅花・荊芥各2.0;甘草1.5;大黄1.0(適量) |
荊防敗毒散 |
荊芥・防風・羗活・独活・柴胡・前胡・枳実・川芎・桔梗・茯苓・連翹・忍冬・甘草・金銀花各1.5;乾生姜1.0 |
三物黄芩湯 |
地黄6.0;黄芩・苦参各3.0 |
涼血清営顆粒 |
地黄・黄芩・牡丹皮各3.0;芍薬・大黄各2.0;山梔子0.75 |
②アトピー性皮膚炎中間期によく使う漢方薬
赤み、痒み、乾燥はあるが熱感は強くない時期は血燥証、風燥証、血瘀証の皮膚病として養血、祛風、祛瘀などの治法を使い痒み炎症を抑えながら体質改善をめざす中間的な処方を選びます。
乾燥性でかさかさが強い湿疹
アトピー性皮膚炎中間期によく使う漢方薬(乾燥性でかさかさが強い湿疹) |
温清飲 |
当帰・地黄・芍薬・川芎各3.0;黄連・黄芩・梔子・黄柏各1.5 |
当帰飲子 |
当帰5.0;地黄4.0;芍薬・川芎・蒺藜子・防風各3.0;何首烏2.0;荊芥・黄耆各1.5;甘草1.0白虎加人参湯石膏15.0;粳米8.0;知母5.0;人参3.0;甘草2.0 |
消風散 |
石膏5;当帰・地黄・朮・木通各3;防風・牛蒡子各2;知母・胡麻・甘草各1.5;蝉退・苦参・荊芥各1 |
滲出性でじゅくじゅくした湿疹
アトピー性皮膚炎中間期によく使う漢方薬(乾燥性でかさかさが強い湿疹) |
竜胆瀉肝湯 |
木通・地黄・当帰各5.0;沢瀉・車前子・黄芩各3.0;竜胆・山梔子・甘草各1.5 |
当帰飲子 |
当帰5.0;地黄4.0;芍薬・川芎・蒺藜子・防風各3.0;何首烏2.0;荊芥・黄耆各1.5;甘草1.0白虎加人参湯石膏15.0;粳米8.0;知母5.0;人参3.0;甘草2.0 |
消風散 |
石膏5;当帰・地黄・朮・木通各3;防風・牛蒡子各2;知母・胡麻・甘草各1.5;蝉退・苦参・荊芥各1 |
③アトピー性皮膚炎緩解期によく使う漢方薬
主として基礎的な体質改善を目指す処方を選びます。
アトピー性皮膚炎緩解期によく使う漢方薬 |
知柏地黄丸 |
知母・黄柏各9.0;熟地黄8.0;山茱萸・山薬各4.0;牡丹皮・茯苓・沢瀉各3.0 |
玉屏風散 |
黄耆6.0;白朮4.0;防風3.0八仙丸麦門冬0.28・五味子0.19;地黄0.75;山茱萸・山薬各0.37;牡丹皮・茯苓・沢瀉各0.28 |
補中益気湯 |
参・白朮各4.0;黄耆・当帰各3.0;柴胡・陳皮・大棗・乾生姜各2.0;甘草1.5;升麻1.0 |
六君子湯 |
半夏・茯苓・人参・朮各4.0;陳皮・大棗各2.0;甘草・乾生姜各1.5 |
柴胡清肝湯 |
柴胡2.0黄芩・黄連・黄柏・瓜呂根・甘草・桔梗・牛房子・山梔子・地黄・芍薬・川芎・当帰・薄荷・連翹各1.5 |
④その他アトピー性皮膚炎に選ばれる処方
アトピー性皮膚炎緩解期によく使う漢方薬 |
十味敗毒湯 |
柴胡・桔梗・川芎・防風・茯苓・樸樕・生姜各3.0;独活・荊芥・甘草各2.0 |
防風通聖散1 |
滑石3.0;石膏・黄芩・桔梗・甘草・朮各2.0;大黄・芒硝各1.5(適量) 防風・川芎・当帰・芍薬・薄荷・麻黄・連翹・荊芥・梔子・乾生姜各1.2 |
黄耆建中湯 |
芍薬6.0;黄耆4.0;桂枝・甘草・大棗・生姜各3.0;膠飴20.0 |
帰耆建中湯 |
芍薬6.0;桂枝・大棗・生姜各4.0;当帰3.0;甘草・黄耆各2.0;膠飴20.0 |
桂枝加黄耆湯 |
桂枝・芍薬・生姜・大棗各4.0;甘草・黄耆各2.0 |
アトピー性皮膚炎によいサプリメント
アトピー性皮膚炎によい漢方薬 |
γリノレン酸(GLA) |
ヨーロッパではアトピー性皮膚炎の治療に用いられるハーブ |
霊芝 |
過剰な免疫反応を調節する |
ビタミンC |
アレルギー症状を緩和する |
ビタミンB6 |
皮膚を正常に保つ |
カルシウム |
良好な免疫バランスを保つためには、豊富なカルシウムが必要です。
|
亜鉛 |
亜鉛は様々な代謝に必要なミネラルです。免疫機能の維持に必須です。 |
ケルセチン |
ケルセチンは、イチゴに多く含まれる成分で、アレルギー反応の主体であるヒスタミンの放出を抑制する働きがあるといわれています。 |
ビタミンC |
免疫をはじめ、血液中のアレルギー反応物質を抑制する働きがあります。特に、免疫機能の向上によりアレルギー反応を抑えるといわれています。 |
|
【公共広告】冬の献血ご協力ください |
|
|